近世建築論集(Pre-modern Architectural Theory)第二刷 著者:中谷礼仁・中谷ゼミナール
価格:2,400円+税
なぜ「近世(=pre-modern)」なのか?
ちょんまげをゆった科学者、もしくは数学者。そう耳にしたとき、私達はある不思議な感覚をおぼえます。それは、私達が「近世」と「近代」という時代を、断絶した別世界であると認識していることに由来するのでしょう。 そして、日本という一国家においてえがかれる建築史は、いまだ、そうした「近世」という時代区分がはらんでいる認識のギャップを巧みに利用しています。それは、近世の不可思議さを隠し持つことによって、日本近代という時代に、かえって独自な彩りを添えているのです。…続きを読む
あとがきより
本書で扱われてきたのは、一八、九世紀を中心とした日本の多くの建築技術書である。現在では全く忘れられた棟梁や大工たちによる記録である。彼らが当時、その刊行によって、社会的な名や財をなすつもりだったかどうかは、不明である。しかし一方で、そのようなあまたの動機にかかわりなく、公に開いておくべき成果が存在すると確信することは、彼らにとっても、そして私たちにとっても自由である。…続きを読む
『近世建築論集』には、「近代建築論」を同じ土俵に引き込み、近世と近代の狭間に漂う建築論の亀裂の保存が画されているように思います。つまり、近世と近代をつがえる力の存在をそこに見るのです。…全文を読む
II 規と矩 1.幕末・明治規矩術の展開過程の研究 2.大工書・溝口若狭林卿「方圓順度」にみる近世の建築世界と明治期における展開 III 器 1.紙上に構築された楼台 2.建築と築建 3.亀裂の保存 あとがき
*II-1のうち「項目分析から見た明治期公刊規矩術書における伝統技術の継承と変質」(92−121ページ)は、 中川武、倉方俊輔との共同研究として日本建築学会学術論文報告集 NO.495 P.255 1997年5月に掲載