書名:round 01  Jewels --- Selected Writings on Modern Architecture from Asia
編集:禅野靖司(Yasushi ZENNO) ジャガン・シャー(Jagan SHAH)


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アジア初・アジア発の全編英語の建築理論誌

先行発売中

価格:1,400円+税
頁数: 216ページ
判型: 203x130mm
言語:全編英語
発刊日: 2006年12月15日


round専用ウェブサイトはこちらEnglish



日本を含むアジアの各地域では、少なくとも19世紀半ばから20世紀後半の150年以上にわたる近代化の歩みを進めるなかで、西洋のArchitectureと接触することにより、それを摂取、応用、換骨奪胎しながら、それぞれ独自の「建築」文化を築き上げてきた。その過程において、例えば日本なら、明治時代の伊東忠太、昭和時代の丹下健三といった エポックメーカーがおり、また彼らが残した文章が存在する。「近代の日本の建築」(近代、日本、建築という三つの名詞間の修飾関係は敢えて固定しない)の発展について考えようとするとき、こうしたテキストの歴史的意義を無視することはできない。

事情は中国においても、インドにおいても、またトルコにおいても同じである。しかし残念なことに、各国の建築史上重要なテキストは、これまで他の言語に訳されることがほとんどなく、したがって一部の例を除いては、自国の建築文化圏の外に知られることが全くなかったばかりか、場合によっては、自国においてさえ埋没したままになっている。それは従来、アジア各地における「近代建築」の位置づけが、過去の植民地化の歴史の評価にからんで、正当になされてこなかったこととも関係しよう。

一年の遅れを経て、今回いよいよ発刊の日を迎えるroundの第一号Jewelsは、2001年にマカオで創設されたmAAN(アジア近代建築ネットワーク)を通して培われた人脈を活用することで、はじめて実現可能となった企画である。即ち、世界各地の研究者たちにテキストの選択及び英訳を依頼、また解題論考を執筆してもらい、それを一冊にまとめることで、アジア各地において建築文化の発展に関わったさまざまな立場の人々が、いかなる問題を認識し、またその解決を目指したのかに関する、個々の知識と全体像を提供する。こうして得られる新たな視点は、従来一国、一地域の視点からのみ研究され、また著述されてきた「近代のアジアの建築」の歴史にとって、画期的な貢献となり得るであろう。

このJewelsに続き、今後roundは、できれば年一度のペースで、毎回異なったテーマ、また時には異なったエディターシップの元に、多角的な視点からアジアの建築に関する知の共有ベースを積極的に構築していく。それが建築家や歴史研究者に広く利用されると共に、教育の場においても活用されることを期待したい。

禅野靖司(round 01編集長)


Contents

Preface and Acknowledgments by Yasushi ZENNO
 
Until recently, the history of modern architecture was understood mainly in terms of various manifestations of the avant-garde, whether it was a matter of concepts and technology or of style. Modern architecture was also discussed from an “occicentric” perspective—as something that emanated from Europe or the United States and that was then promulgated to the rest of the world...read more

Introduction by Jagan SHAH
 
[In round 01, the] reader will find a variety of subjects, periods, and
writing styles represented in the eleven chapters, which contain an
archival text, either translated or reproduced, accompanied by an essay
that contextualizes the text and its author and illuminates the subject.
Thus, round 01 effectively contains more than twenty-two readings covering
different periods of the last two centuries, and significant moments in the
evolution of architectural thought in Japan, China, Taiwan, South Korea,
Vietnam, Singapore, India, and Turkey.... read more



Section 1 Defining “Architecture” in Asia: Various Aspects
第一部:
アジアにおけるArchitectureの受容の諸様相

Chapter 1
Chuta Ito’s Proposal to Choose the Japanese Translation of the Word “Architecture” and Rename Zoka-Gakkai Accordingly
Kenchiku or Zoka as Vague Translation of “Architecture”
by Norihito NAKATANI
日本近代において「建築」という用語がArchitectureの翻訳語として確定するのに決定的となった伊東忠太の1894年の論文の英訳。その理論的展開のなかに日本近代における「建築」の現在にまで続く特質が最も明晰な形で現れている名論文。その近代史的意義を全世界に向けてアピール。

Chapter 2
Ernest Binfield Havell on the Future of Architecture in India
EB Havell and the Thought of Indian Architecture
by Jagan SHAH
イギリス植民地当局がインド=サラセン様式を通して、自分たちにとって政治的にも感情的にも都合のいいオリエンタリズム建築をインド各地で建てていたまさにその時、インドの建築文化のあるべき理解を訴えた Ernest Binfield Havellの著作を紹介。その解説を通じて、「西洋」が「アジア」の建築文化を理解することの意味、実際上の困難、そして可能性を探る。

Chapter 3
Writings of Wajiro Kon from the 1920s
Wajiro Kon: An Architect Who Envisioned “Architecture as a Container of Everyday Life”
by Izumi KUROISHI

考現学や民家の研究で知られる今和次郎の「生活」に関する思考を理解するため、その代表的な著述三編より抜粋して、今和次郎研究で知られる黒石いずみ氏が初の英訳を施し、解説を付す。



Section 2 The Search for “National” Architectural Styles
第二部:
アジアにおける「国民国家」建築への様式模索と歴史的構築

Chapter 4
Liang Sicheng and Tong Jun on Traditional Chinese Architecture
Constructing the “New Knowledge” of Chinese Architecture: Two Approaches
by Bobby Chong-thai WONG and TAN Zhengzhen
20世紀前半にはじめて欧米及びそこから派生した日本の、近代的な「国家建築史」のあり方に触れた中国では、Liang Sicheng(梁思成)及びTong Junという二人の著名な建築史家が現われ、それぞれ独自の「中国建築」の歴史的理解を世界に示した。シンガポール大学の研究者が、この二人のアプローチを著作(英文オリジナル)を通し、比較検討する。

Chapter 5
Speech at the Founding of Taiwan Architectural Society
Facing Weather and Customs: What Makes Taiwan’s Architectur “Taiwanese”
by Cheng Che CHEN
中国建築、特に華南地方のそれの亜流と見られがちな台湾における漢民族の伝統建築。しかしそれは独自のアイデンティティーを発達させた現在の台湾において、「原住民」の生活文化 をも視野に入れながら、台湾の風土と生活に根ざした独自の歴史的建築文化として理解されるようになっている。そうした現代台湾の視点のルーツを、戦前の日本統治時代の「台湾建築会」の歴史に探る。

Chapter 6
Kenzo Tange and Dento Ronso in Postwar Japan
Finding Mononoke at Ise Shrine: Kenzo Tange’s Search for Proto-Japanese Architecture
by Yasushi ZENNO
1953年の伊勢遷宮にあたり、許可を得て伊勢神宮を見学した丹下健三。その丹下は、伊勢に「縄文」と「弥生」という二つの日本文化のルーツが今日も共存しているのを見た。同じテーマを論じた川添登の文章も合わせて考察し、当時の「現象学」的建築論が、戦争で汚名を着せられてしまった「伝統」を、戦後再び、どのように日本建築の「根」として扱おうと試みたのかを考える。

Chapter 7
Conflicting Views on the Architectural Style of the Buyeo National Museum: Does It Resemble a Japanese Shrine or Not?
Architectural Identity in Postcolonial Korean Society: Controversy on Architectural Style of the Buyeo National Museum
By Changmo AHN
韓国の戦後近代建築を代表する金壽根。彼が60年代後半に扶余に建てた国立博物館は、金の留学先の東大で丹下健三の薫陶を受けた日本の影響を受けている、即ち日本の神社のスタイルを取り入れたものだと、完成当時激しい非難を受けた。その時の新聞の非難記事及び金自身による反論を始めて英訳で韓国国外に紹介。韓国の中堅近代建築史家アン・チャンモー氏による解説を付す。

Chapter 8
Nguyen Cao Luyen on Vietnamese Traditional Thatched-roofed Houses
The Pioneer of Vietnamese Architecture—Nguyen Cao Luyen
by Shoichi OTA
ヴェトナムに近代建築を導入した世代の建築家が論じる「ヴェトナム建築とは何か、どうあるべきか?」日本以外のアジア諸国でも、日本と同様の「ナショナルスタイル」への模索があった。それをヴェトナムの例を通して、より普遍的に理解するためのエッセーを、近代ヴェトナム建築史を専門とする東大の大田省一氏が執筆。

Chapter 9
Turkish Architecture and Decoration in the 15th Century
Léon Parvillée and the Discourse on “Turkish” Architecture
by Miyuki AOKI GIRARDELLI
19世紀後半のオスマン帝国で活躍したイタリア人建築家Léon Parvillée は、多文化帝国オスマンの建築の実態に触れ、「トルコ建築」と呼べるものはないと喝破した。当時のヨーロッパで確立され、やがてアジア諸国へ波及した「ナショナルスタイル」論議(本書所収の諸論考も、そのヴェトナム、韓国、日本、中国における様相を扱っている)を現代の 観点から振り返る時、決してそれを過去のものと片付けることはできない。だからこそ、この100年以上前の「帝国の視点」を知ることは有効である。

Section 3 The Urban Context
第三部:
アジア近代建築の都市的文脈における理解

Chapter 10
National Land Development Plans of South Korea
South Korea’s Territorial Planning: From Local Management
to Global Positioning
by Marie-Hélène FABRE
韓国ソウルの都市計画を、1960年代から現在に至るまで俯瞰し、それが韓国の国家戦略といかに密着し、韓国の国際的地位向上と共にどのように変化してきたかを、パリの大学で都市計画史を教える新進気鋭の研究者が分析、解説する。

Chapter 11
Urban Design and Speech Freedom in 1960s Singapore:
S.P.U.R. (The Singapore Planning and Urban Research Group)
SPURing Design and Planning: Dialogue in Post-Colonial Singapore
by Gregory CLANCEY

1960年代末にウィリアム・リム達らが主導した建築運動S.P.U.R. その歴史的意義を現代の視点から、シンガポール大学で教鞭をとるアメリカ人歴史学者グレゴリー・クランシーが分析する。従来の硬直したシンガポール近代建築の理解を塗る替える一編。

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早稲田大学 理工学術院 創造理工学部 建築学科 中谷研究室気付
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