『文象先生のころ 毛綱モンちゃんのころ』 渡辺豊和著 



渡辺さん、男の厄年に向って大変だね・・・毛綱モン太


渡辺豊和様

謹啓

お元気ですか。つい昨日、先生の悪口雑言をいう輩がいて、思わず殴りあいのけんかをしてしまいました。
なんせ、わたしゃ先生のように、眼ん玉をむいた威力で相手を叱咤したり、鼻毛の林を吹き抜けた威息で相手を吹き飛ばしたり、唾液腺ホルモンの煙幕で相手を退散させるなどといった芸当ができませんので、ついカットなって腕力にうったえてしまったのです。そいつは先生のことを、フイゴだなんていうんです。あの渡辺流ダベリング建築を、手も動かさずにフイフイと駄弁で作りあげるフイゴ建築だなんていうんです。わたしゃ、腹が立って、腹が立って。
ところで、東京に出て来て半年あまりになります。先生の怪気焔に遠ざかってもうそんなになります。知的で心優しいわたくしのような上手な聴き手のない、関西はつまらないでしょうね。件の商売人やインチキ野郎が相手では、せっ角の先生のツとオンヌンとキォーキ(血と怨念と狂気を東北弁で発音してください)の情熱も、政済界の黒幕と実懇かのごとき幻術も、何かたちの悪い法螺話のように響いてしまうに違いなく、ただただ同乗の念に耐えません。でも頑張ってください。(後略)